今日の帰り道

哲太の最近の学校帰りは、もっぱら友達が同じ東三河だということで
その友達の車で、本線の通る駅まで送ってもらっていて、
友達の好意に感謝しつつ、あぁ車ってなんて便利なんだと
改めて思ったりしてるわけで、そんな変わらぬ帰り道での
今日のことだった。友達が、
「あ、ゴメン薬局寄っていい?」というので
もちろん送ってもらっている立場だし、時間も全然余裕だったものだから
「良いに決まってんじゃーん、なに、ガムとかのお菓子??」と聞くと
「あ、いやコンドームきらしちゃってさ。」と友達。
薬局の中で迷わず、コンドームのコーナーへ。
へ、へぇ…最近じゃ青リンゴの香りやら、イボイボがついてんのも
あるんだねぇ…哲太がたじろいでいる間にその友達はしゃがみこんで
お買い得!!なんてシールの張ったメチャクチャ数の入ったのを
つかんだかと思うと、ペットボトルの飲み物と一緒にレジへ行ってしまった。
あぁ!レジは若いお姉さんが!!大丈夫なのか!?
哲太の無駄な心配をよそに、友達は
「あ、印(テープ)だけでいいです。」といってレジ袋を断ってました。
車が待つ駐車場へ歩く途中、
「しまったなぁ、買いすぎちゃったかな?哲太いる??」
と、友達がおそらく本当の親切心を働かせて聞いてくれた。
「あぁ、いや、いいよ…」哲太は遠くに続く青田を見ながら、
ため息と一緒に吐き出すように言った。
「それにしても元気だねぇ…」車に乗り込むとき
ドアを閉めながら哲太が言うと、
「ハハ、今晩後ろでヤらんといかんからねぇ」と後ろの
ゆったりした3列シートを指しながら言った。
「ハハ、マジかよ〜」
午前中に降った雨の匂いを含んだアスファルトの匂いが心地よい。
どこか湿り気を帯びた、やさしい春風を顔に受けて、
哲太は脇の道路を挟んで広がる道沿いの田んぼを
車の窓から空笑いをして眺めていた。