こちら大変お得なカードですが、いかがですか?

火車 (新潮文庫)

案外、就活に受ける一般常識の試験なんかは、

国語に限って言えば、そこら辺のハウツー本を読むよりかは

こういった固めの長編小説を読んだほうが、語彙の勉強になるな、

と思ったりした。「僥倖」とか「狼狽」、「芳しい」なんて言葉、

そういった、問題集の中でしか見たことがなかったものだから

結構勉強になった。

が、一番勉強になったのは、この小説のテーマである

クレジットカード、サラ金、自己破産といった

カード社会の闇の部分だった。

僕のバイト先でも何気なしに、お店の方針として、

会員カードにクレジットカードがくっついたカードを推奨している。

そのカード、もちろん、大手のクレジット会社と提携しているので

キャッシング機能も自動的にくっついてくるのだけれど、

今思うと正直、何て物を勧めていたんだと思えたりする。

小説の中でも登場人物の弁護士*1が言っているのだが、

僕らがバイト先で勧めたりしている

いわゆる流通系カードと分類されているものや銀行系のクレジットカードで

キャッシングする金利というのは、実はCMとかでよくやってるような

大手サラ金と、さして金利は変わらないそうだ。

ただ何となく、流通系や銀行系の方が金利が安いような、借りても安心なような気がするだけ。

気がするだけ。

それだけの違い。アホらしいがそんなもんなんだそうだ。

確かに、普段良く使うお店の会員カードに

くっついているキャッシング機能で借りるのと、

街角の無人契約機に人目をはばかって駆け込むのとじゃ、

前者の方が格段にスマートだし安心な気がするよね。

そう、そんな気がする。

しかし、大手流通系や銀行系で作った借金の返済に苦しくなると、

実際はもう少し審査の甘い会社、そこも苦しくなるとさらに甘い会社、と

結局は二度と浮かび上がることにできないところまで沈んでいってしまう…らしい。

この小説はその沈みきってしまった人が起こす失踪事件から始まり、

その事件は思わぬ方向に進んでいくのだが…。

話を戻すと、勉強になったのはこれに関連した、

自己破産の手続きについて。

まだ、僕はするような負債を抱えた経験も無いし、していないが、

結構事細かに手続きが紹介されていたりして、予備知識として

覚えておくぶんには充分だった。

いや、予備知識じゃないね。こんな時代だからこそ、こういうことを

一般常識というのじゃないのかな。

小説に登場する弁護士も言っているが、クレジットカードが蔓延する

社会とどう向き合い、付き合うか。向き合いきれなくなったとき、

自己破産を含めてどう対処するのか、これだけカード社会と呼ばれる現代、

そういう教育が、世の中に出る若者にほとんどされずにいる現状。

いったい世の中で、どんな知識が本当に必要とされて、何が一般常識なんだろ。

おぼろげにそんなことを思いながら、財布の中身を確認したら

レシートと7円しか入ってなかった。

ちょ…おかーさーん!!お金貸してー!

ハァ?利子!?

*1:この弁護士には宇都宮弁護士とう実在のモデルがいる